catch-img

偽装請負とは?パターンや問題点、起こりやすい理由などについて徹底解説

請負契約を結ばれている企業さまのなかには、「偽装請負」という言葉を聞くことも多いのではないでしょうか。
しかし同時に、「どんな内容かわからない」「何が問題なのか知りたい」「自社で発生するリスクを回避したい」という企業さまもいらっしゃるでしょう。

今回は企業の人事に関わる方に向けて、偽装請負の特徴や問題点、確認しておくべきポイントを解説していきます。
この記事を読めば、労働者を採用する際、偽装請負につながるリスクを完全に避けられますので、ぜひ最後まで一読していただけると幸いです


目次[非表示]

  1. 偽装請負とは
    1. ■ 依頼元がすべて管理しているパターン
    2. ■ 形式だけ責任者を設置しているパターン
    3. ■ 受発注元や雇用関係が複雑なパターン
  2. 偽装請負は何が問題なのか
    1. ■ 福利厚生や手当が受けられない
    2. ■ 合理的な理由がなくても契約解除ができる
    3. ■ 中間搾取が起こりやすいかも(複数企業が携わる場合)
  3. 偽装請負は「規制から逃れるとき」に起こりやすい
  4. 偽装請負にならないように確認したい点
    1. ■ 請負や派遣の仕組みを理解する
    2. ■ 契約内容や会社情報を改めて確認する
    3. ■ 偽装請負のケースを把握する
  5. まとめ

偽装請負とは

NG

偽装請負とは、働いている形態が労働者派遣であるにもかかわらず、請負で契約している違法な行為のことです。
偽装請負は企業側が有利で、労働者側が不利になってしまう仕組みに問題があります。
契約上の問題で可視化されづらく、労働者側が問題視しなければ偽装請負は表沙汰になりません。

まず偽装請負について詳しく知るために、派遣契約と請負契約の違いを理解しておきましょう。


派遣・請負契約の特徴

契約タイプ
報酬の対象
福利厚生や手当
作業の指揮者
請負
作業の結果(成果物)に支払われる
発生しない
請負企業
派遣
働いた時間(労働時間)に支払われる
発生する
派遣先企業

このように比較してみると、労働者派遣のほうが企業側の負担は多いことがわかります。
上記を元に、請負契約に偽装することで得られるメリットを挙げてみましょう。


<請負契約に偽装することで得られるメリット>

  • 福利厚生や手当などの費用をカットできる
  • 労働時間ではなく、成果に対して報酬が発生する
  • 作業の進捗を管理しやすくなる


つまり、企業側が有利で、かつ労働者側が不利になるような仕組みだといえます。
このようなメリットがあるとしても、「法律に反してまで偽装請負で得したい」という考えをもっている方はいらっしゃらないでしょう。

しかし偽装請負は、企業側が「正当な請負契約を結んでいる」と思っていても、違法行為に該当する可能性があります。
無自覚で違反行為をしないためにも、偽装請負にどのようなパターンがあるのかを理解しておきましょう。


偽装請負のパターン

  • 依頼元がすべて管理しているパターン
  • 形式だけ責任者を設置しているパターン
  • 受発注元や雇用関係が複雑なパターン

上記3つの偽装請負のパターンについて、それぞれ深掘りしていきます。


■ 依頼元がすべて管理しているパターン

先述したとおり請負契約は、派遣元である請負会社が労働者の作業指示や労働時間の管理をします。
依頼元である企業が関わることは許されていません。
依頼元がすべてを管理している偽装請負のパターンは、以下のような状況が考えられます。


<依頼元がすべて管理している偽装請負の例>

  1. 請負会社が業者Aから業務を受託する
  2. 請負会社が労働者Bを雇用する
  3. 請負会社は労働者Bを業者Aにて就労させる
  4. 労働者Bの作業・労働時間を業者Aが管理する


依頼元が管理しているケースは典型的なタイプなので、最初に頭に入れておきましょう。
「労働者を仕切る存在」がどこにあたるのかが重要なポイントです。

■ 形式だけ責任者を設置しているパターン

請負会社の人材を、形式上だけ責任者として現場に設置しているパターンも、偽装請負のパターンに当てはまります。
一見業務に請負会社が関わっているようにみせているものの、実際は依頼元が労働者をコントロールしている状態です。

先述したパターンを元に解説すると、労働者の作業や働いている時間を、業者Aが管理しているという意味では変わりがありません。

ただし偽装請負にならないために、請負会社を形式上だけでも関わらせており、先ほどのパターンより悪質だといえます。
もちろん、現場にいる請負会社の人材が労働者Bを管理しているのであれば、なにも問題はありません。

しかし請負会社の人材がまったく関与していない場合は、偽装請負のパターンに該当するので注意しましょう。


■ 受発注元や雇用関係が複雑なパターン

請負会社が複数の企業や別の請負会社と同時に契約するなど、雇用関係がとにかく複雑なパターンも偽装請負が成立しやすいでしょう。


<関係性が複雑なパターンの偽装請負の例>

  1. 請負会社Bが業者Aから業務を受託する
  2. 請負会社Bが1の業務を別の請負会社Cに再委託する
  3. 請負会社Cが労働者Dを雇用する
  4. 請負会社Cが労働者Dを業者Aにて就労させる
  5. 労働者Dの作業・労働時間を業者Aや請負会社Bが管理する


上記のように関係性が複雑化すると、労働者Dをコントロールしている会社が結局どこにあたるのかが判断しづらくなります。

企業間でも、労働者Dが派遣契約か請負契約かで、認識の違いが生まれてくることもありえるでしょう。


このようなパターンの場合、「偽装請負に該当していることに気づかなかった」という場合も十分考えられます。

どうしても複数の会社を経由する必要がある場合は、労働者を管理するべき企業がどこにあたるのかを明確にして、認識を統一しておきましょう。


偽装請負は何が問題なのか

偽装請負は何が問題なのか


偽装請負が違法行為になるほど問題視されている理由について、解説します。

  • 福利厚生や手当が受けられない
  • 合理的な理由がなくても契約解除ができる
  • 中間搾取が起こりやすいかも(複数企業が携わる場合)


■ 福利厚生や手当が受けられない

偽装請負は契約上が請負契約なので、派遣契約のように福利厚生や手当が受けられないという問題があります。
大前提として、請負契約は雇用契約を結ばない仕組み上、福利厚生や手当を受けられません。

そもそも社会保険などの福利厚生やさまざまな手当は、企業側の大きな負担のうえで支給されています。
この費用をカットするために、請負契約を装うという違法行為におよんでいることが、問題視されている理由です。


■ 合理的な理由がなくても契約解除ができる

請負契約の場合、依頼した成果物が納品されるまでの間であれば、依頼した企業側に合理的な理由がなくても契約解除ができます。

一方派遣契約の場合、なんらかの合理的な理由がなければ、依頼者側の都合で契約解除はできません。
つまり企業側が「契約解除をしやすい」という目的を果たす意味でも、請負契約に偽装する価値があります。
雇われる側は、不当に契約解除されるリスクを負わなければなりません。


また、​​業務に関して不利益が生じた際の責任の所在についても、派遣と請負で違いがあります。
派遣契約であれば、よほどの過失が労働者になければ、損害賠償を企業側が負担しなければなりません。
その際、請負契約であれば損害賠償を労働者に請求することが可能です。

「不利益発生時の損害賠償を逃れたい」という意味でも、企業が請負契約に偽装する価値があるでしょう。
もちろん、雇われている側としては、本来支払う必要がない損害賠償を負担する可能性が出てくるので、大問題といえます。


■ 中間搾取が起こりやすいかも(複数企業が携わる場合)

先述したとおり、請負会社が複数企業と契約する場合は関係性が複雑化するため、中間搾取が起こりやすくなります。
偽装請負を考えている悪質な企業なら、関与している会社を増やし、ごまかしやすくするのは当然の流れでしょう。

ただし、1つの請負契約に関わる企業が増えれば増えるほど、中間マージンが発生するリスクはどうしても避けられません。
その場合、当然最後に支払われる労働者の給料は少なくなってしまいます。
中間搾取で労働者の給料が下がりやすいという意味でも、偽装請負は大問題です。


偽装請負は「規制から逃れるとき」に起こりやすい

偽装請負は、労働法や派遣法の規制内容が気になる企業で発生しやすい違法行為です。

労働法や派遣法が適用される派遣契約の場合、合理的な理由がない限り、契約解除はかんたんにできません。
また派遣できる期間に制約があるため、企業側のスケジュールと合わず、業務が滞ることも考えられます。

さらに福利厚生の補償や、手当の支給まで必要となれば、「規制を逃れたい」と考える企業が出てきても不思議ではないでしょう。

つまり、「規制を逃れたい」「自社に都合よく労働させたい」と考えた場合に、「請負契約を偽装すればいい」と結論づけてしまう企業が出てきてしまいます。


偽装請負にならないように確認したい点

偽装請負にならないように確認したい点

偽装請負は、無自覚で加担する可能性がある点が怖いところです。
契約が偽装請負にならないように、以下3つのポイントを意識してみましょう。


■ 請負や派遣の仕組みを理解する

先述したとおり、偽装請負とは働いている形態が労働者派遣なのに、請負で契約している違法行為のことです。
つまり請負と派遣の違いさえ理解しておけば、無自覚で偽装請負に巻き込まれることを避けられます。

■ 契約内容や会社情報を改めて確認する

偽装請負になることを避けるためには、請負会社が人材派遣業の許可を得ているか確認する必要があります。
確認を怠り、「ほかの企業も契約しているから」などの理由で依頼元を選ぶと、気づかないうちに偽装請負に加担させられてしまうかもしれません。

また、「人材派遣業の許可を得ている」と口頭で説明を受けたとしても、契約内容は必ず確認しておきましょう。

口頭ではなく書面などで明確にチェックし、慎重に契約を結ぶことが重要です。

■ 偽装請負のケースを把握する

偽装請負にはどのようなパターンがあるのかを把握しておくことも大切です。
復習も兼ねて、偽装請負に該当するパターンを確認しておきましょう。


<偽装請負のパターン>

  • 依頼元がすべて管理しているパターン
  • 形式だけ責任者を設置しているパターン
  • 受発注元や雇用関係が複雑なパターン


事前に把握しておくことで、偽装請負になることを避けられます。
それぞれどういう状況なのか、完璧に理解しておきましょう。


まとめ

今回は企業で人事に携わっている方に向けて、偽装請負の特徴や何が問題なのかなど、確認しておくべきポイントについて解説してきました。

偽装請負は、請負・派遣の仕組みの違いや該当するパターンを十分理解し、その内容を自社内で共有することで未然に防ぐことが可能です。

自社で請負契約を結んでいる場合は、今回の記事を参考に、現在結んでいる契約が偽装請負に該当しないか確認しつつ、今後の契約についても注意するようにしてください。






CAREERLINK
ISO9001認証マーク
LiNEアイコン
facebookアイコン
twitterアイコン
Instagramアイコン